2014-12-01から1ヶ月間の記事一覧

ななそじあまりむつ その6

その晩、白装束の男は夕食の席に姿を現さなかった。 次の日、そしてまた次の日も。 ここ数日間、ミヨたちは屋敷で大人しくしていた。男が現れたら、ミヨが脱出を試みたこととスケイチが蔵に入ってしまったことを謝って、どうにかして許しを乞おうと考えてい…

「なぜこんな挑戦を?」 3

立花文がいない。 そのことに和志はひとしきり安堵しつつも、どこか得体のしれない不安に襲われた。 ごくり、唾とともにそれを飲み下し、今日は早く本を借りて帰ろう、と心に決める。 日に焼けた紙の匂い、薄く積もった細かい埃の匂い、古びたインクの匂い。…