ななそじあまりむつ

ななそじあまりむつ その7

* * 虚空蔵菩薩。 ミヨやスケイチの生きる時代には既に成立していた十三仏信仰の主尊であり、智慧と福徳をつかさどる仏様として広く知られる。姿形としては、蓮華座に座し、五智宝冠を頂き、右手に智慧の宝剣、左手に福徳の如意宝珠を持っている。知識や記…

ななそじあまりむつ その6

その晩、白装束の男は夕食の席に姿を現さなかった。 次の日、そしてまた次の日も。 ここ数日間、ミヨたちは屋敷で大人しくしていた。男が現れたら、ミヨが脱出を試みたこととスケイチが蔵に入ってしまったことを謝って、どうにかして許しを乞おうと考えてい…

ななそじあまりむつ その5

二十三日目。スケイチは瞑想にふけるミヨを見ていた。部屋の真ん中で正座をして、外の世界を受け付けないといった様子だった。 白いものを探して答える作戦は失敗に終わり、なぞかけへの手がかりは、途切れてしまった状態にある。ミヨは今も彼女なりに作戦を…

ななそじあまりむつ その4

スケイチは思わず後ずさりをした。目の前に立つ白装束の男から放たれるただらなぬ威圧感に、押しつぶされてしまいそうな気分だった。全身の筋肉が強張り、身体を上手く動かすことが出来ない。口を開くことすらままならない状態だった。 「ここでなにをしてい…

ななそじあまりむつ その3

スケイチの村にはある風習があった。山の麓の岩壁に御印が現れたら、神に村人を一人供えなければならない。そして、生まれたばかりの赤子を一人、次の贄として麓の小さな洞窟で他の村人と関わらないように育てるのだ。

ななそじあまりむつ その2

あの蔵へ行った日から三日の間、ミヨはなぞかけの回答をすることができなかった。男はミヨとの食事には現れたが、食事を済ませた後はさっさと立ち去ってしまうのだった。ただ、男は欲しいものはあるかと食事中に尋ねてきたので、答えておけばすぐにその物を…

ななそじあまりむつ その1

* * 昔々、あるところに、ミヨという名の年ごろの娘がいた。この物語が語られる時点からどれほど昔の出来事なのか、そこで生きているミヨには知る由もない。当然のことだ。しかし、こちらは当然でないことに、あるところとはどこなのか――自分がどこにいる…