拭えない違和感。 停電した双草荘での逮捕劇――そして監禁。神埼自身の体験ではない記憶を神崎から引き継ぐのはこれが初めてではないが、何度引き継ごうともいまだに慣れることのない神埼であった。目の前に広がる殺風景、こちらに向けられた八つの瞳、背中と…

伝えたいことがある。 空条は神崎の言葉を胸中で反芻しながら、それでも答えを見つけられずに……そもそも意味など無いのかもしれないが、青波翁を訪ねに薄明かりの廊下を歩いていた。さすがにこの季節のこの時間はまだ廊下の明かりなしでは暗いものの、それで…

＊ ＊ ＊ 第七章 「告白」 やぁやぁ、優秀なる警察諸兄、あるいは東条君、ごぎげんよう。それとも、そこにいるのはまだ私には知る由もない、はるか後世の人なのかもしれないが。 まぁいい。いずれにせよ、この短文が貴兄の目に触れているということは、私は…

一階廊下の照明も消えていた。 懐中電灯の光が虚しく暗闇を貫く。どうやら双草荘全体が停電しているらしいと神崎はようやく気づいた。眠っている間に偶然、たまたま雷が落ちたのか。それとも人為的なものか。これまでの事件を考えると、疑心暗鬼にならざるを…

他の四人と使用人らが階段を下りていく足音を聞きながら、神埼は静かにドアを閉めた。慣れない手つきで鍵を掛け、辺りを見回す。部屋は暗闇に包まれており、足元さえ定かでない。神埼は崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。背中を預けたドアは固く、これが…

双草荘の三階北側に位置するトイレ前の廊下。そこには今小さな人だかりができている。皆使用人の悲鳴に引かれて集まってきた者たちだ。青波武生、青波幸生、空条明日香、輿山氏、この館に留まっていた数人の使用人、そして。 「……朱、実……」 神埼は呆然と妻…

＊ ＊ ＊ 「ここまで黙っておいて難ではあるが、少しいいかい？」 切れるか切れぬか張り詰めた場を割るは、実直を墨に溶かした身なりの弁護士。その手腕を買われ、若くしてその地位を得た秀才である。 東条助手は深い相貌で弁護士を眺めた後、掌を差し出し話…

神崎は妻を連れ、明日香の後に続きダイニングへと向かう。 吹き付ける風雨が廊下の窓を激しく揺らしていた。神崎は足を止めず、横目で窓外の景色を眺める。 神崎が双草荘へ招かれたのは初めてではない。青波翁が開く個人的な食事会には、数年前から度々妻と…

＊ ＊ ＊ 殺人事件！ 嵐近付く闇夜の洋館、轟く悲鳴はただならぬ気配。慌てて駆け付けた一同が見たのは、腰を抜かした家政婦と仰向けに倒れた名探偵。じっと天井を見つめる虚ろな双眸は、とんと生気が見えぬ。まばたきもせず、身じろぎもせず。 殺人事件！ …

サークル説明会日程 4/16（金） 16:30〜 全学S11 4/23（金） 16:30〜 全学C41 4/30（金） 16:30〜 全学S21 また、4/20（火）16:30から、例会を行ないます。 こちらも、興味のある新一年生の方々は是非どうぞ。 場所は文系総合館３階（もしくは４階）中央の自…