なぜこんな挑戦を?

「なぜこんな挑戦を?」4

変わり果てたダイニングに足を踏み入れた和志は呆然と立ち尽くした。両親の姿は無い。共働きの二人が外出済みなのはいつものことだったが、別の明らかな異変が彼の目の前に現れていた。

「なぜこんな挑戦を?」 3

立花文がいない。 そのことに和志はひとしきり安堵しつつも、どこか得体のしれない不安に襲われた。 ごくり、唾とともにそれを飲み下し、今日は早く本を借りて帰ろう、と心に決める。 日に焼けた紙の匂い、薄く積もった細かい埃の匂い、古びたインクの匂い。…

「なぜこんな挑戦を?」 2

目を覚ますと、わきには有名な作家が書いた、話題になっている推理小説が無造作に置いてあった。 表紙と裏表紙は透明なテープが貼られ、カバーが取れないようになっている。さらに裏表紙には自分が通う学校の名前に続いて「図書館」の三文字とバーコードが印…

「なぜこんな挑戦を?」 1

神谷和志には悩みがあった。それも二つ。