あなたが最後では?

あなたが最後では? その6(下)(終)

注:これはリレー小説『あなたが最後では?』の最終回です。 あなたが最後では? その1 - 名大文芸サークルのブログ あなたが最後では? その2 - 名大文芸サークルのブログ あなたが最後では? その3 - 名大文芸サークルのブログ あなたが最後では? その…

あなたが最後では? その6(上)

惨状に山浦は冷めていた。 鮮血をモニター越しに一瞥して。 左のイヤホンからは絶えず情報が。 「一目瞭然ですが、念のために宣言をしましょうか――」 ――これまで、撃ち抜かれた的は五つ。お化け屋敷で三つ。観覧車付近で二つ。それらの中にはモニターで確認…

あなたが最後では? その5

「それでは風谷様、回答をお願いします」 風谷と呼ばれた老年の男は、深く刻まれた皺を寄せ集めて渋面を作っている。 「なかなか難しいものだ、さすがは白石の者と言ったところか」 「ほれ、近藤。 風谷の能を発揮してみせい」 爺に唆され、男は眉をひそめた…

あなたが最後では? その4

窮屈なスーツの殻を破って出てみると、そこは暗い、通路のような場所でした。よく目を凝らすと、一面に白い煙が立ち込めていて、なんだか不思議な場所でした。 目の前には男が一人、みすぼらしい顔で立ち尽くしています。 何をそんなに驚いているの? あたし…

あなたが最後では? その3

「あーあー。やりおったわ」 暗い部屋に男が四人、車座になって座っている。そのうちの一人が、つぶやいた。彼らは中央にあるモニターを見ており、今そこにはお化け屋敷内部の映像が映っている。 「あれは山浦君の支払いだぞ」 山浦と呼ばれた男は、もちろん…

あなたが最後では? その2

参ったな。舌打ちをして、渡良瀬は頭を掻いた。 ふと気が遠くなって、目を覚ましたら自分の掌すら確かめられないような暗闇の中に一人ぼっちだ。 「おーい。誰かいませんかー?」 呼びかけて、「いないだろうなぁ」とため息混じりに呟く。 「そういや、俺が…

あなたが最後では? その1

暗闇の中で最初に目を覚ましたのは、十六番ゴンドラに搭乗した一人の男だった。ゴンドラの揺れで窓ガラスに頭を打ち、不機嫌そうに舌を鳴らす。 彼は名前を浅野といい、運送会社で働くどこにでもいるような若者だった。しかし真面目な社員とは言えず、本来な…