リカラス

リカラス その七

大学。 独立行政法人。 学問研究機関。 大学。 俺はここに居場所があるとは感じられなかった。 嘗ての俺は、この場所に疎外感を感じ、違和感のままに大学を拒否した。避けて、寄り付かなくなった。 しかし、頭の片隅に置いてある懸念事項というものは無意識…

リカラス その五

まったく同じものを見ても、人によってその見え方が違う、ということはある。例えば錯視。一つの絵を見ても、あるものはそれを老人と呼び、あるものは少女と呼ぶ。錯視は色の認識を変えることも可能だ。周囲の配色や影を利用することによって、同じはずの色…

リカラス その四

「……マジかよ」 いっぺんに色々なことが起こり過ぎて、すっかり忘れてしまっていた。電化製品には、充電が必要だ。人間にだって、飯という充電が必要だ。俺にだって、休息が必要だ。 力んでいた肩を下ろし、俺はソファに身を投げ出した。先ほどまで布団のよ…

リカラス その三

・・・ 「それで?」 「……………………」 「ぱっと思いついた頼れる人間がボクだけだった、と自意識過剰しても良いのかな?」 画面越しの相手の声に対し、ぐうの音も出せずに、ただ首肯するしか出来ない俺だった。

リカラス その二

誰かが部屋のなかにいる……? 俺のアパートはしがない1Kの学生アパートだ。しかも居間が六畳、家賃三万。だから、玄関まであがれば部屋に何人くらいいるか大体想像がつく。どうやら一人だけのよう。まさか泥棒か、と思ったけれど、綺麗に靴が並べてあるのが…

リカラス その一

発端は、一匹の猫だった。リカラスという名前で、全身真っ白の、どこにでもいそうな猫。