故障かな、と思ったら

故障かな、と思ったら 番外編

・・・ 深井由芽の右足が弾け飛んだのは、彼女が十一歳の時だった。 ありふれた話である。彼女には何の非もない。ただ通学道に一台のトラックが突っ込んできただけのこと。いくら将来有望の陸上選手でも、避け切れる訳がなかった。 そう、彼女はかつて長距離…

故障かな、と思ったら その8(終)

「ね、ねぇクソ野郎、ソトちゃんを助けたいの?」 おどおどとしながらも汚い口調でサナがカズキに尋ねた。レヴィオストームに近づいたハナイが消えてから、数分が経過したところだった。ドーム状の空間の中央では、もう叫べなくなり始めているスズキがそれで…

故障かな、と思ったら その7

魔法少女。 幼い女の子たちの憧れの存在。 煌びやかに変身を遂げ、杖を一振りすればどんなことでもきらっと解決してしまう。 彼女たちが望み、もたらすのは二つ。 奇跡と希望。この二つ。

故障かな、と思ったら その6

魔神はそれぞれが天災を司っている。嵐、津波、雷、地震、噴火、疫病、旱魃。それらはいずれも、圧倒的な暴力でもって人類に牙を向く、まさに暴虐の権化そのものだ。

故障かな、と思ったら その5

ハナイの髪が爆散した理由には、おおよそ四つある。 まずは、当然、彼女自身の実力不足があげられる。魔法少女のための実力に関して、彼女は未だに不完全な部分があるのだ。そのため、変身失敗というミスが生まれた。けれど、彼女だけなれば。ここまで酷い状…

故障かな、と思ったら その4

第四章 ユメは走っていた。村を外れ、舗装すらされていない道を。 その顔は涙に濡れていた。涙どころか鼻水も出てしまっていて、濡れているというよりぐちょぐちょで汚いのだがそれはさておき、とにかく彼女は泣いていたのだ。 その理由は簡単で、彼女の従え…

故障かな、と思ったら その3

三章 ハナイとソトとサナの三人は暗い洞窟の中を進む。 「そもそも、アセラってどんな物なんだろう?」 サナが疑問を口にする。それに対して、ハナイもソトもはっきりと答えられない。アセラの管理が魔法少女の仕事とは言っても、普段は山の表面にある杭にエ…

故障かな、と思ったら その2

二章 信じること、それが強さだ。 一点の光もない。何も見えない。すぐそばにいるはずの顔すらまったく見えないし、どこに壁があるのかもわからない。ごつごつとした岩に覆われた足元が、ひどく不確かなものに思われる。地面が、揺らぐような錯覚さえ覚えた…

故障かな、と思ったら

【故障かな、と思ったら】 一章 昔の堕胎方法として、女性の膣内を熱した鉄棒で掻き混ぜる方法がある。 このことを話すと、大抵の人間は苦虫を噛み潰したような顔をした。 その表情を見るのが彼女の祖母は大好きだった。要は変人だったのである。 それでも、…