サークル説明会のおしらせ

新しい季節を迎えられたみなさん、こんにちは!名古屋大学文芸サークルです。下記の日程にて、サークル説明会を開催いたします。 4月15日(水)15:00〜 全学教育棟S10教室 4月17日(金)18:15〜 全学教育棟C15教室 4月22日(水)15:00〜 全学教育棟C32教室 4…

リカラス その七

大学。 独立行政法人。 学問研究機関。 大学。 俺はここに居場所があるとは感じられなかった。 嘗ての俺は、この場所に疎外感を感じ、違和感のままに大学を拒否した。避けて、寄り付かなくなった。 しかし、頭の片隅に置いてある懸念事項というものは無意識…

五月四日、文学フリマに参加いたします。

みなさんこんにちは。 五月四日(月祝)に東京物流センターにて開催される第二十回文学フリマに、私たち名古屋大学文芸サークルは出店いたします。会場:東京物流センター 開催日時:2015年5月4日 ブース:Eホール1階B-50 タイトル:湯煙 価格:500円 (表紙…

ななそじあまりむつ その7

* * 虚空蔵菩薩。 ミヨやスケイチの生きる時代には既に成立していた十三仏信仰の主尊であり、智慧と福徳をつかさどる仏様として広く知られる。姿形としては、蓮華座に座し、五智宝冠を頂き、右手に智慧の宝剣、左手に福徳の如意宝珠を持っている。知識や記…

リカラス その6

俺には信じるものがない。 蜂の巣城は存在しない。

「なぜこんな挑戦を?」4

変わり果てたダイニングに足を踏み入れた和志は呆然と立ち尽くした。両親の姿は無い。共働きの二人が外出済みなのはいつものことだったが、別の明らかな異変が彼の目の前に現れていた。

リカラス その五

まったく同じものを見ても、人によってその見え方が違う、ということはある。例えば錯視。一つの絵を見ても、あるものはそれを老人と呼び、あるものは少女と呼ぶ。錯視は色の認識を変えることも可能だ。周囲の配色や影を利用することによって、同じはずの色…

ななそじあまりむつ その6

その晩、白装束の男は夕食の席に姿を現さなかった。 次の日、そしてまた次の日も。 ここ数日間、ミヨたちは屋敷で大人しくしていた。男が現れたら、ミヨが脱出を試みたこととスケイチが蔵に入ってしまったことを謝って、どうにかして許しを乞おうと考えてい…

「なぜこんな挑戦を?」 3

立花文がいない。 そのことに和志はひとしきり安堵しつつも、どこか得体のしれない不安に襲われた。 ごくり、唾とともにそれを飲み下し、今日は早く本を借りて帰ろう、と心に決める。 日に焼けた紙の匂い、薄く積もった細かい埃の匂い、古びたインクの匂い。…

ななそじあまりむつ その5

二十三日目。スケイチは瞑想にふけるミヨを見ていた。部屋の真ん中で正座をして、外の世界を受け付けないといった様子だった。 白いものを探して答える作戦は失敗に終わり、なぞかけへの手がかりは、途切れてしまった状態にある。ミヨは今も彼女なりに作戦を…

「なぜこんな挑戦を?」 2

目を覚ますと、わきには有名な作家が書いた、話題になっている推理小説が無造作に置いてあった。 表紙と裏表紙は透明なテープが貼られ、カバーが取れないようになっている。さらに裏表紙には自分が通う学校の名前に続いて「図書館」の三文字とバーコードが印…

リカラス その四

「……マジかよ」 いっぺんに色々なことが起こり過ぎて、すっかり忘れてしまっていた。電化製品には、充電が必要だ。人間にだって、飯という充電が必要だ。俺にだって、休息が必要だ。 力んでいた肩を下ろし、俺はソファに身を投げ出した。先ほどまで布団のよ…

ななそじあまりむつ その4

スケイチは思わず後ずさりをした。目の前に立つ白装束の男から放たれるただらなぬ威圧感に、押しつぶされてしまいそうな気分だった。全身の筋肉が強張り、身体を上手く動かすことが出来ない。口を開くことすらままならない状態だった。 「ここでなにをしてい…

ななそじあまりむつ その3

スケイチの村にはある風習があった。山の麓の岩壁に御印が現れたら、神に村人を一人供えなければならない。そして、生まれたばかりの赤子を一人、次の贄として麓の小さな洞窟で他の村人と関わらないように育てるのだ。

「なぜこんな挑戦を?」 1

神谷和志には悩みがあった。それも二つ。

リカラス その三

・・・ 「それで?」 「……………………」 「ぱっと思いついた頼れる人間がボクだけだった、と自意識過剰しても良いのかな?」 画面越しの相手の声に対し、ぐうの音も出せずに、ただ首肯するしか出来ない俺だった。

リカラス その二

誰かが部屋のなかにいる……? 俺のアパートはしがない1Kの学生アパートだ。しかも居間が六畳、家賃三万。だから、玄関まであがれば部屋に何人くらいいるか大体想像がつく。どうやら一人だけのよう。まさか泥棒か、と思ったけれど、綺麗に靴が並べてあるのが…

ななそじあまりむつ その2

あの蔵へ行った日から三日の間、ミヨはなぞかけの回答をすることができなかった。男はミヨとの食事には現れたが、食事を済ませた後はさっさと立ち去ってしまうのだった。ただ、男は欲しいものはあるかと食事中に尋ねてきたので、答えておけばすぐにその物を…

リカラス その一

発端は、一匹の猫だった。リカラスという名前で、全身真っ白の、どこにでもいそうな猫。

ななそじあまりむつ その1

* * 昔々、あるところに、ミヨという名の年ごろの娘がいた。この物語が語られる時点からどれほど昔の出来事なのか、そこで生きているミヨには知る由もない。当然のことだ。しかし、こちらは当然でないことに、あるところとはどこなのか――自分がどこにいる…

ウェブサイト・アップ板移転のお知らせ

ウェブサイトとアップ板を設置していたレンタルサーバが平成26年8月1日で運営休止となるため、以下のURLに移転しました。ウェブサイト:http://meidaibungei.lolipop.jp/ アップ板:http://meidaibungei.lolipop.jp/mtsg/mtsg.cgiリンク先の変更などお手数を…

『泡』vol.14・vol.15販売いたします!

6月5日(木)〜8日(日)にて行われる第55回名大祭にて、部誌『泡』を販売いたします!今年度は多くの作品が集まり、2冊の分冊にさせていただきました。 (画像はクリックで拡大表示されます) 場所全学教育棟A館A12教室 日時7日(土)10:00〜18:00…

十八回文学フリマ・レポート

東京で5月5日に行われた文学フリマに参加しました。 天気があまり芳しくはなかったのですが、大勢の人が押し掛けてくれてありがとうございます。 わたしたち、名大文芸サークルとしては東京文フリ初ということで、前日入りからの意気揚々と参加して、大い…

5月5日 文学フリマに行きます!

タイトルの通り、5月5日東京流通センターで開かれる第十八回文学フリマに、われわれ名大文芸サークルが出展します。東京流通センター 2014年5月5日(月祝)11:00〜17:00 Fホール(2F)イ-38にて! 『玉響』を販売します! 価格は500円でワンコイン。 表紙…

暮れなずむエクトプラズム、鶯とポルターガイスト 17+1

(『イラスト先行・競作小説』とは、『はじめにイラスト担当の方にイラストをいくつか描いてもらい、それらを挿絵とした小説を競作する』という企画です) (企画の詳細・作品一覧はこちら) 暮れなずむエクトプラズム、鶯とポルターガイスト 17+1 結局なん…

サークル説明会のおしらせ

新しい季節を迎えられたみなさん、こんにちは! 改めまして、名古屋大学文芸サークルです。下記の日程にて、サークル説明会を開催いたします。 4月14日(月)18:15〜 全学教育棟C21教室 4月17日(木)18:15〜 全学教育棟S1X教室 4月22日(火)18:15〜 全学教…

夜曲「Fall down」 第二話  夕坂貞史・作

「私はですね……売れなくていいじゃなくて、売れたくないんです」 『え……………………!?』 ぞくり、とした。 僕は、スピーカーは、何も考えていなさそうな笑みを浮かべているだろうと勝手にあたりをつけていた相手、彼女を凝視した。 しかし、闇から流れ落ちたよ…

小さな音楽達 第2話 (西本歩浩)

彼らにとって、五階の空間は、巨大なビルが林立する大都市のようでした。 フロアの入口の左手には、タンスやテーブル、食器棚、ソファなどが並ぶ家具売り場があります。前方と右手には、インテリアの商品を取り扱うスペースと、お客さんが相談するためのカウ…

暗闇の世界  すばる

閉店時間の過ぎた九十九百貨店は、照明が落とされ、闇の中にあった。そんな九十九百貨店の中でも、この場所はひときわ暗い。窓のないこの場所には、月明かりすら届かず、世界は暗闇に包まれていた。漆黒の中に動くものの気配はなく、静寂が時を満たす。

バナナチップ その8(終)

確かにベンジャミンは腹が減っていた。もう一日以上は交替で車を運転していたし、その間ずっとわがままなアシュリーとマイペースなギルバートに挟まれていたのだ。そして彼が出発する前にデリで買い込んでいた食料のほとんどは、彼が食べる前に二人の腹の中…