新アップ板への移行のお知らせ

これまで作品投稿に使っていたアップ板の不具合解消のため、新アップ板に移行しました。http://meidaibungei.s1.adexd.net/mtsg/mtsg.cgiそれにともない、ブログの右上にアップ板の最新作品へのリンクを載せるようにしました。 また、リンク集やサークルの説…

故障かな、と思ったら 番外編

・・・ 深井由芽の右足が弾け飛んだのは、彼女が十一歳の時だった。 ありふれた話である。彼女には何の非もない。ただ通学道に一台のトラックが突っ込んできただけのこと。いくら将来有望の陸上選手でも、避け切れる訳がなかった。 そう、彼女はかつて長距離…

バナナチップ その7

「どうすればいいの?」 「やはり相手のいることだからね。相手の好むものを作らないと。相手を喜ばせることが肝心なんだ。」 どうやらルーシーは、ベンジャミンと二人で食事をするという考えが、いたく気に入ったようだった。 「相手を、ね…」 ルーシーは深…

バナナチップ その6

もしも生きて帰ることができたなら、スマホは死ぬまでマナーモードにしよう。 そんなことを考えながら、ベンジャミンは調理台の陰から立ち上がる。 「うふふっ」ルーシーはとても楽しそうだ。「やっと見つけた」 「……見つかっちゃったね」ベンジャミンは肩を…

何も無かったらかかないでね! その15.5(番外編)

※時系列としては、その15の直後に位置するエピソードです。 ※その16(最終回)の展開を示唆する内容が含まれています。 「僕は――」 そう切り出した時点では、何を言うのか決まっていなかった。言いたいことは山ほどあるつもりだったけど、この会合で藤村…

故障かな、と思ったら その8(終)

「ね、ねぇクソ野郎、ソトちゃんを助けたいの?」 おどおどとしながらも汚い口調でサナがカズキに尋ねた。レヴィオストームに近づいたハナイが消えてから、数分が経過したところだった。ドーム状の空間の中央では、もう叫べなくなり始めているスズキがそれで…

故障かな、と思ったら その7

魔法少女。 幼い女の子たちの憧れの存在。 煌びやかに変身を遂げ、杖を一振りすればどんなことでもきらっと解決してしまう。 彼女たちが望み、もたらすのは二つ。 奇跡と希望。この二つ。

『血と暴力の国』・『ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー

こんにちは。西本歩浩です。 この忙しい時期ですが、またちょっと小説を紹介したい欲にかられました。部員からも「書いて良いよ」とお許しを得たので、再びこの場を借りて本の紹介を掲載します。 今回紹介するのは、アメリカの作家、コーマック・マッカーシ…

故障かな、と思ったら その6

魔神はそれぞれが天災を司っている。嵐、津波、雷、地震、噴火、疫病、旱魃。それらはいずれも、圧倒的な暴力でもって人類に牙を向く、まさに暴虐の権化そのものだ。

バナナチップ その5

一方そのころ店の横手では、木箱の下敷きになった老爺がちょうど息を引き取るところであった。 彼の名前はスティーブン・グローブランド。『Banana Chips』の近隣に住む、心優しい男であった。年齢のせいかすこしボケているところはあったが、若い身空であり…

バナナチップ その4

僕とギルバートは、少女に二階の居間へと案内された。中は暖かく、非常に快適だ。僕は至極丁寧に切り出した。 「やあ、ありがとう。本当に助かったよ。ぜひとも向こうに戻ってから、改めてお礼がしたいからアドレスを教えてくれないか?」 かなり直球ではあ…

何も無かったら書かないでね! その16 《最終回》

かちゃり、と胸ポケットの中で金属音がした。 「中学のときの友達がさぁ──」 目の前の美弥子は音になど気づかない様子で話を続けている。私はさり気なく胸元を手で抑え、それで? と話を促した。 「その子の高校だと、雰囲気がオープンっていうのかな? そう…

故障かな、と思ったら その5

ハナイの髪が爆散した理由には、おおよそ四つある。 まずは、当然、彼女自身の実力不足があげられる。魔法少女のための実力に関して、彼女は未だに不完全な部分があるのだ。そのため、変身失敗というミスが生まれた。けれど、彼女だけなれば。ここまで酷い状…

故障かな、と思ったら その4

第四章 ユメは走っていた。村を外れ、舗装すらされていない道を。 その顔は涙に濡れていた。涙どころか鼻水も出てしまっていて、濡れているというよりぐちょぐちょで汚いのだがそれはさておき、とにかく彼女は泣いていたのだ。 その理由は簡単で、彼女の従え…

バナナチップ その3

ベンジャミンは、夜空を見上げた。星が見たかったわけではない。ちょっとした現実逃避をしたくなったのだ。今の彼には、爆弾処理班の気持ちがよく理解できた。 原因は、アシュリーだ。 彼女は、親指の爪を噛んでいた。 イライラがある閾値を超えると、アシュ…

夜曲「Fall down」 第一話     夕坂貞史・作

ある地方中枢都市のある駅前にそのデパートは立っている。 仮にも創業百年近い老舗百貨店の支店であるわけだが、デパート離れの進む現代、訪れる客は少なく、売れ残った商品達はその数を増していた。 その五階にある電気店も例外ではない。 ちょうど目を覚ま…

故障かな、と思ったら その3

三章 ハナイとソトとサナの三人は暗い洞窟の中を進む。 「そもそも、アセラってどんな物なんだろう?」 サナが疑問を口にする。それに対して、ハナイもソトもはっきりと答えられない。アセラの管理が魔法少女の仕事とは言っても、普段は山の表面にある杭にエ…

キャピタル・C・インカゲイン その13(2) 《最終回》

白い廊下はまた左に折れた。そしてなおも続く。花梨は息苦しさを覚えて、胸を押さえた。 「大丈夫か?」 という士の呼びかけに、やや無理をしたような笑みで答える。 「ちょっと、苦しくなっただけ。うん、平気」 二人はぐるぐると回転を続けるような世界で…

キャピタル・C・インカゲイン その13(1)

――そしてその手紙はきっとあなたを不幸にするでしょう ――そして種は蒔かれ、大きな争いが芽吹くでしょう ――そしてそれぞれの思惑、夢、喜怒哀楽、愛は時の流れによって淘汰されるでしょう ――そして世界は、最後の二つの種を選ぶでしょう ――そしてそれは、世…

バナナチップ その2

ルーシーの目の前にある皿の上には四つのチップスが並んでいた。大きさは少し違うものもあるけれど、全て綺麗なきつねいろに揚がっていた。これならお客さんに出しても恥ずかしいことなんてない。 「でも、まだ足りないわ…」

故障かな、と思ったら その2

二章 信じること、それが強さだ。 一点の光もない。何も見えない。すぐそばにいるはずの顔すらまったく見えないし、どこに壁があるのかもわからない。ごつごつとした岩に覆われた足元が、ひどく不確かなものに思われる。地面が、揺らぐような錯覚さえ覚えた…

暗闇星(クラヤミボシ)  御伽アリス・作

闇。暗い闇。の中……。 闇だから暗いのは当たり前かもしれないけれど、何しろ暗いんだここは。暗闇だ。 真夜中のデパートというのはね、本当に暗い。昼間は煌々と照明が点いていて、さらに人々が集まって賑わう場所だから、そのせいで余計に夜中は真っ暗に感…

キャピタルCインカゲインその12(2)

空は白く、澄み渡っている。肌を刺すような寒さが全身に染み渡る。だがまもなく、そんなことなど感じられないほどに、自分たちは熱く燃え上がるだろう。 「敵情はどうなっている?」 「すでに顕現したホワイトキャッスルより敵部隊が送り込まれています。ど…

キャピタルCインカゲインその12(1)

白み始める空の元、地面が、世界が揺らぐ。崩れ落ちてきたコンクリートの塊が、すぐそばで砕けた。飛んできた破片が体を打つ。もうだめか。そう思った。仕方がない。元から命など捨てる覚悟。ただ、できることならあなただけは無事でいてほしいと、わが身を…

小さな音楽達 第1話 (西本歩浩)

そのCDショップは、九十九デパートの六階にあります。開店している間に店の側を通りかかってみれば、いつでも何かの曲がかかっているのが聞こえてくるでしょう。店の前のウィンドウには、新しいアルバムを出す歌手や人気グループのポスターが所狭しと張ら…

シェアードワールド企画について

【目次】 西本歩浩 小さな音楽達 第1話 第2話 御伽アリス 暗闇星(クラヤミボシ) 夕坂貞史 夜曲「Fall down」 第一話 第二話すばる 暗闇の世界 今年、名大文芸サークルのブログでは、現在進行中のリレー小説2作品に加え、シェアードワールド企画を行います…

故障かな、と思ったら

【故障かな、と思ったら】 一章 昔の堕胎方法として、女性の膣内を熱した鉄棒で掻き混ぜる方法がある。 このことを話すと、大抵の人間は苦虫を噛み潰したような顔をした。 その表情を見るのが彼女の祖母は大好きだった。要は変人だったのである。 それでも、…

バナナチップ その1

ここは北米大陸でもっとも長閑なところだと、住民の誰もが思っていた。夏は蒸し暑く頻繁に雨が降る土地ではあるが、秋から冬にかけてはまあまあ過ごしやすい。何かと不便なことばかりの田舎町だが、助け合う機会が多いためかひとびとの交流は深い。事件らし…

『泡vol.13』販売!

6月6日(木)〜9日(日)に開催される第54回名大祭にて、今年も部誌『泡』を販売いたします!泡vol.13 場所 全学教育棟C36教室 価格 200円 販売時間 8日(土)10:00〜17:30頃 9日(日)10:00〜16:00頃 また、バックナンバーである泡vol.12、文学フリマで販…

何も無かったら書かないでね! その15

「終わりにしよう。藤村さん、もう君の計画が成功する見込みはない。全て元通りに。君の手で振り出しに戻してくれないか」